建設業の業態化のススメ

 建設業が<氷河期>に突入して久しい。
平成2年バブル経済の崩壊と共に、建設業受難の幕開けとなリました。その後、様々な建設政策の転換や建設業関連法
の施行、改正が相次ぎ、建設業はまさに受難の時代を迎えたのです。


 平成8年にピークを迎えた公共工事も、約3割程度減少し、雇用にいたっては、平成9年の685万人をピークにして建設就業者数が徐々に減少平成16年には497万人になりました。(総務省「労働力調査」)

 その根底施策となるのが、平成13年から国土交通省が推し進めている
「集中と淘汰」政策です。
 ゼネコンの合併(集中)を進めるとともに数の淘汰を図ろうとするもので、これから企業の統合・合併がより促進されると同時に、得意の分野を持たない月並みな企業は遠からず淘汰されることが予想されます。

 平成18年の一般経済では、「いざなぎ越え」といわれるほど景気が回復したと報道されていますが、建設市場においては、民間市場こそ住宅に支えられたものの公共工事は相変わらずの減少で、全体としては横ばい水準で、まだまだ市場縮小化の傾向ではないでしょうか。

 一口に建設業といっても28工事(建設業法)に分類されており、すべてを同一に論じることは出来ませんが、特に土木工事工事業、サブコン等が厳しい状況ではないでしょうか。

 建築工事業、木造建築工事業にしても、好調な企業と不調な企業との格差が広がりつつあり、その競合状況は益々激化の一途を辿っています。

 何故このように好不調の格差がでるのでしょうか。営業力の差、技術力の差、経営資源、商圏の大きさ等様々な理由はありますが、それよりも不調な建設企業に共通なことは、他社と差別化出来るモノがない、得意とする強みがない、又、技術はあっても、ユーザー(発注者)からみてどんな建築・家を造ってくれるのかわからない、などが考えられるのではないでしょうか。建設業が目に見えない商品を対象とした受注生産方式ですから、そのような不安は無視できないくらい大きいのでしょう。

 流通業ではよく使われる
「差別化」「業態化」「マーケティング」等というキーワードも建設業ではほとんど使われたことがありません。
 それは、業界が<横並び>でも、他社と異なる経営戦略でなくてもなんとかやっていける業界だったから必要なかったのではないでしょうか。
 言い換えれば、他社と特に差別化しなくても、業界の一員として公共工事にありつけ、人脈、地縁、政治力等という営業ツールで受注できたからです。

 しかしながら、公共工事が豊富にあり、みんなで仲良く分け合って受注するという時代が終わった今日では、競争に打ち勝って民間工事の受注を伸ばさねばなりません。そのためには、流通業と同じように
<横並び>でない業態化を図り、ユーザーの支持を得なければ生き残ってはいけない時代を迎えたのです。

 業態化とは「ある消費者層の生活シーンを捉えて、そのライフスタイルに適合した商品展開を図り、これに合致した商品・サービスを提供すること」です。

 すなわち、全てのユーザーが対象ではではなく、ターゲットとする顧客を定め、彼らのライフスタイル、ビジネススタイルに適合する商品(建物・設備等)やサービス(ノウハウ・メンテナンス)を提供できる建設企業になろうと目指すことが
業態化への第一歩です。

 ここまで読んだ業界人は、おそらく、「業態化だって!そんなに簡単に出来るか!土建業界と流通業とは違うんだ! 建設業界には業界のやり方があるんだ!」 「又景気が回復すれば依然のように・・・・・」という声が聞こえてきそうですね。

 でも、冷静によく考えて見てください。中小工務店さんが不振に陥っている現象を分析してみると、地場の工務店の棟梁さんの技術力は素晴らしい、コストもプレファブメーカート比較しても遜色ない、アフターも充分出来る、・・・・・・・。
 すなわち負ける要素は少ない。なのに年々受注量は減少している。(勿論例外はあります) 何故でしょう?
 
 一度工務店対象のセミナーで聞いてみると、次のような原因が挙げられました。それは、展示場がない、営業トークが下手、プレゼンが下手、コストが合わない、工期が長い、お客さんがわがまま?・・・・・・・・等です。

 果たしてそうでしょうか。確かに上記のようなコトも原因かもしれないが、それよりも、ユーザーが自分たちが欲しいのは<自分たちのライフスタイルに合った住まい>をうまくコンサルティングしながら造ってくれるのだろうか?という不安が大きいのではないか。私にはそう思えて仕方がありません。

 コストも安い方が良いに決まっているが、それだけで、大手のハウスメーカーを選ぶ決め手になるとも思えない。展示場がない、これは、商品を<目で確かめられる>のとそうでないのでは大きな差であることは否定できませんが、工務店には過去の実績としての住宅がその街にあるのでこれも決め手にはなりません。

 そう考えると、地場の工務店が、ユーザーが描いているライフスタイルに最も相応しい<住まい>をコンサルティングして造ってくれる業者としてみてくれているかかどうかが有力な決め手になるのではないでしょうか。 
 
 では、どのようにして業態化を図っていくべきか。現在の一般的な建設業者からどこを、どのように変えていけば良いのか、工務店を例にして具体的に考えて見ましょう。下記のポイントを整理して検討してください。
  
 ◆ あなたがターゲット顧客にしたい層は誰ですか?
 ◆ 提供する商品・サービスは今までのままで良いですか?
 ◆ 仕入れルート、店舗立地、店構えはどうですか?
 ◆ 価格、価格帯については、これまでどおりで良いですか?
 ◆ 販売促進(宣伝・広告・パブリシティー・人的対応等)はどうですか? 

 これらのこれまでの内容について検討し、どこをどう変えた方が良いか、そしてどう組み合わせた方がお客様の高い評価を得られるかを基準にして改善してください。

 ここで大事なことは、業態化推進のための改善事項の切り口は、あくまで
お客様の目線で行うということです。独りよがり(自社の都合)な改善はダメです。

 以前実際にあった事例ですが、新築住宅をメインにしていたN工務店の社長さんが受注量を確保するためにリフォーム部門を設けました。そのためにしたことは、先ず、新聞チラシを入れ、自社の建物に看板を上げ、専用の電話を設置しました。 一応リフォーム担当者は定めていましたが、その取り組みはこれまでの延長上で特別に考えず、これで充分注文が来るだろうと考えていました。結果は予想以上に惨めなものでした。

 この事例の失敗した原因は、あくまで自社中心の安易な考えで取り組んだことです。 先ず、リフォーム事業は、あくまで新しい工事で、新築の延長ではないということに社長さんが気がつかなかったのが失敗のモトだったのです。

 リフォームをしたいお客様が何を一番望んでいるかを認識した上で事業の仕組み(ビジネスモデル)を考えることをせずに、安易に小規模な新築工事の延長程度の仕組みで取組んだ結果ですから、お客様に満足を与えることが出来なかったのです。

 住宅リフォーム事業が、一般の住宅の新築工事と徹底的に異なるのは、発注者が生活している同じ空間、スペースで工事を行うということです。従って先ず出来るだけ工期の短縮を図る、発注者の生活ペースを乱さないで、不快な対応、振る舞いはしないで工事を行うということです。作業員教育が大事ですね。

 次に
店構えに問題があります。気軽に入れて相談が出来、気軽に断れて退店できる雰囲気の工務店が少ないですね。入りやすく出やすい店、これは小売店舗も同じです。前述のN工務店さんのように専用電話で充分というのは不親切ですね。

 又、どのくらいの予算で工事が出来るかという情報が乏しいのもお客様が不安に思う要素の一つです。価格、価格帯の情報をHP、パネルなどで常に見られる場所に掲示したいものです。

 この他、アフターサービスに工夫をする、プレゼンテーションにITを活用してビジュアルな提案を判りやすくする・・・・・・・・・・等いくらでも差別化できる方法はありますね。このように、工務店(建築業)の業態化を図り、他社と異なる方法・仕組みで独自性の高い建設業を目指してはどうでしょうか?
 
 最後に、建設業は
<サービス業>だ!  この認識があなたの会社を変える第一歩です。